スペインのbusiness-sportにて、各F1チームの2019年スポンサー収入について分析したレポートが掲載されていたので、意訳してご紹介します。
尚、F1チームの年間活動予算は、これから紹介するスポンサー収入だけでなく、各チームに分配される賞金も重要な資金となっています。
また、各F1チームの正確なスポンサー料は、契約当事者同士でなければ分かりませんので、以下紹介する内容については、おもしろ半分で読んで頂ければ思います。
画像・データ出典元:https://www.business-sport.es/
F1チームの推定スポンサー収入詳細
スクーデリア・フェラーリ Mission Winnow
まずはF1の象徴とも言える真紅のスクーデリア・フェラーリです。
現代のF1チームにおいては、非常に珍しくタバコ会社がタイトルスポンサーを務めます。
フェラーリF1チームは、タバコ会社のフィリップモリスが2億5000万ユーロ(約300億円)でマシンの全スペースを購入したあとに、他のスポンサーへ転売していると言われています。
フェラーリF1チームをスポンサードする各企業のスポンサー料(推測)
- フィリップモリス ミッションウィノウ 1億3000万ユーロ(約160億円)
- UPS 2500万ユーロ(約30億円)
- シェル 2500万ユーロ(約30億円)
- レノボ 1600万ユーロ(約20億円)
- レイバン 1200万ユーロ(約15億円)
- カスペルスキー 350万ユーロ(約4.3億円)
- HUBLOT 300万ユーロ(約4億円)
- WEICHAI 260万ユーロ(約3.2億円)
- OMR 160万ユーロ(約2億円)
- MAHLE 150万ユーロ(約1.8億円)
- AMD 150万ユーロ(約1.8億円)
メルセデスAMGペトロナス
2014年から始まったパワーユニット(PU)時代を制覇しているのがメルセデスF1チームです。
古くはティレルから始まったこのチームは、BAR・ホンダ、ホンダワークスチーム、ブラウンGPを経由して現在のメルセデスワークス・チームとなっています。
メルセデスのF1ワークスチームは、マレーシアの国営石油会社であるペトロナスがタイトルスポンサーを努めています。
マレーシアでは1999年から2017年まで約20年に渡ってセパンサーキットでF1を開催していましたが、2018年以降は開催していません。
F1に代わって、バイクレースの世界選手権であるmotoGPに力を入れている印象があります。
2019年からは、最高峰のmotoGPクラスにヤマハのサテライトチームとして参戦していますが、ヤマハワークスチームと同様に最新型のワークス仕様のバイクが供給されています。
そんなメルセデスF1チームの2019年スポンサー総収入は、約106.6百万ユーロ即ち約130億円近くと言われています。
メルセデスのF1マシンには、チャンピオンチームとは思えないほど空白スペースが多く大きなスポンサーロゴはペトロナスぐらいです。
そんなペトロナスは、年間で約70億円近くのスポンサー料を支払っていると見込まれています。
アストンマーチン・レッドブルレーシング
V8NAエンジン時代を席巻していたのがレッドブル・レーシングです。
F1界随一のエンジニアと言われるエイドリアン・ニューウェイ氏がデザインしたマシンと、現在フェラーリに在籍しているセバスチャン・ベッテルを要して4連覇を成し遂げました。
しかし、パワーユニットの時代になってからは、チャンピオンを獲得できずにいます。
2019年からは、V8エンジン時代から共に栄光を勝ち取ったルノーとの関係を終了し、新たに日本のホンダからパワーユニットを供給してもらう体制へと変わりました。
エナジードリンクメーカのRed BullがこのF1チームにどれだけの資金を投入しているかは、不明ですが、タイトルスポンサーのアストンマーチンは年間で約23億円の資金を提供されているとされます。
そして2019年からは、日本のホンダが約30億円の資金提供をされていると推測されています。
◯才男性
2021年シーズン末でホンダがF1から撤退することが発表されました。
今後レッドブルは、新たなパワーユニットを探す必要が発生するだけでなく、10億円以上とされるパワーユニットの代金を支払う必要が発生します。
他の主要スポンサーとしては、ESSOブランドを要するエクソンモービルが約19億円のスポンサー料と言われています。
レッドブルF1チームの年間スポンサー収入は、約116億円とされ、これにはレッドブル社からの資金やFOMからの賞金や分配金は含まれません。
レッドブル・トロロッソ・ホンダ
レッドブル傘下のF1チームであるトロロッソは、2018年からホンダのワークスエンジン供給を受けています。
トロロッソは、弱小チームであったミナルディをレッドブル社が買い取って以降、着実に戦闘力を上げていて、今や、レッドブルの育成ドライバーをF1にステップアップさせる際のチームとして定着しています。
そんなトロロッソは、小規模チームであるため、スポンサー収入の規模もトップチームに比べて小さくなります。
主な収入としては、チームオーナのレッドブルとパワーユニットを供給するホンダの2社と目されています。
レッドブルからは、年間60億円以上の資金が投入され、ホンダからは約30億円近くの資金が投入されると推測されています。
日本関係では、時計メーカのカシオがトロロッソのスポンサーですが、こちらは年間約4億円のスポンサー料と考えられています。
ルノー F1チーム
ルノーのワークスF1チームは、2019年のスポンサー収入は推定で約100億円ほどと見込まれています。
主なスポンサーは、金融RCi銀行と燃料メーカのBP社で、それぞれ約15億円ほどのスポンサー料と推定されています。
ルノーのF1マシンには、日産自動車の海外向け高級ブランドであるINFINITI(インフィニティ)のロゴが目立ちます。
ルノーが自身のワークスチームを復活させる前は、レッドブル・レーシングにワークスエンジンを供給している関係で、INFINITIのロゴがレッドブルのF1マシンにも掲載されていました。
日産自動車の親会社はルノーですから、それが関係しての資金の流れということでしょうか。
尚、INFINITI関係のスポンサー料は、約13億円と推測されています。
マクラーレン
マクラーレンF1チームの2019年推定スポンサー収入は年間で約110億円と目されていて、メルセデスやレッドブルといったトップチーム並です。
1980年代から2012年までトップチームとして君臨してきたマクラーレンですが、2013年以降は勝利から遠ざかっています。
2015年から2017年までホンダとパートナーシップを結んで、ワークス待遇を得ていたわけですが、期待した結果を得られず、ホンダに責任を転嫁する形でパートナーシップを解消することになりました。
Amazon.co.jp: グランプリ・ドライバー - シーズン1 (字幕版)を観る | Prime Video
2018年からはルノーに莫大なエンジン代金を支払うカスタマーチームとして戦っています。
そんなマクラーレンですが、フェラーリF1のミッションウィノウと類似した形でBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社)とスポンサー契約を締結。
A BETTER TOMMOROWというロゴがマクラーレンのマシンに複数掲載されています。
ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社からのスポンサー収入は、年間で約10億円ほどと推測されています。
マクラーレンには、2019年からスペインのカルロス・サインツJrがドライバーとして加入した関係で、スペインの飲料メーカであるエストレージャ・ガリシアがスポンサーの一つとして加わっています。
ちなみに、エストレージャ・ガリシアのロゴは、スペイン人が大活躍しているmotoGPの世界では、各クラスでチームのタイトルスポンサーなども努めている関係で目立っています。
日本関係でいうと、マクラーレンF1チームには、長年日本の曙ブレーキが部品供給していますが、曙ブレーキ工業社は現在財務状況の悪化に苦しんでいるため、今後もマクラーレンにブレーキを供給していけるのか気になるところです。
SportPesa・レーシングポイント F1チーム
2018年までフォース・インディアとしてF1に参戦していたチームは、オーナーシップが代わって、新たにレーシングポイントという名称になりました。
カナダの大富豪で、F1ドライバーのランス・ストロールの父でもあるローレンス・ストロール率いる投資グループがオーナーとなっています。
そんなレーシングポイントは、2019年にオンラインスポーツ賭博企業のスポーツペサ(SportsPesa)がタイトルスポンサーに付きました。
そのスポンサー料は、年間で約19億円とされています。
そして、F1マシンに大きなロゴが掲載されるBWTも同じく約19億円のスポンサー料とされてます。
BWTは、F1を始めとしたモータースポーツ以外のスポーツでも、最近そのロゴを目にする機会が多いですね。
日本のJCBは関係なし
レーシングポイントのリアウィングの翼端板にはJCBのロゴが見られますが、これは、日本のクレジットカードブランドのJCBではありません。
このJCBは、イギリスのWATLING JCB社のロゴになります。
セルジオ・ペレス関係のスポンサー
レーシングポイントには、ドライバーのセルジオ・ペレス関係でいくつかのスポンサロゴが掲載されています。
それらの多くは、セルジオ・ペレスを支援する世界の大富豪カルロス・スリム由来の企業で、その中には、日本のNECと関係があるNECメキシコも含まれます。
- TELMEX
- telcel
- NEC
- Claro
ROKiT ウィリアムズレーシング
昨年までタイトルスポンサーを努めていたマルティニが抜けることで、資金難になるのではと噂されたウィリアムズは、今年新たに通信企業のROKiTをタイトルスポンサーに獲得しました。
ROkiTは年間で約25億円のスポンサー料をウィリアムズに支払うと目されていますが、ウィリアムズの2019年スポンサー収入は、全体で約65億円ほどとマクレーンと共に1980年台から2000年台にかけて複数回のチャンピオンや勝利を上げたチップチームとは思えない規模へと縮小しています。
ROkiT以外で大きなスポンサーとしては、日本でも制汗剤などで知られるRexona(レクソーナ)で、年間のスポンサー料は推定で約18億円とされています。
リッチーエナジー・Haas F1チーム
アメリカの工作機械メーカHassの創業者で、NASCARで活動してきたジーンハースが自分の資金を投入して活動しているのがHass F1チームです。
2016年からF1に参戦したばかりで、最も歴史が浅いチームですが、フェラーリとの提携によって、主要部品の供給を受けることで高い戦闘力を発揮しています。
そんなHaas F1チームには2019年はじめてタイトルスポンサーが付きました。
それが、エナジードリンクのRICH ENERGYです。
ただ、このRICH ENERGYについては、ちゃんとスポンサー料を支払えるのかという疑問もあるようです。
リッチーエナジーとのタイトルスポンサー契約はシーズン途中で解消されました
基本的に、Hass F1チームは、ジーンハースの自己資金によって運営されている状況といえます。
巨額の費用を要するF1チームの運営をいつまでハースが続けられるのか、気になります。
ちなみに、先日公開されたNetflix独占のF1ドキュメンタリーでは、アメリカのF1チームということで、至るところでHassのスタッフが登場します。
アルファロメオ・レーシング(旧ザウバー)
今年からチーム名称が昨年までのザウバーからアルファロメオ・レーシングに変わりました。
チームのスポンサー収入としては、アルファロメオからの約75億円にも及ぶ資金が殆どを占めます。
アルファロメオはご存知のように、フェラーリと同様にフィアット・クライスラー傘下の自動車ブランドということで、フェラーリF1チームのBチームと目されています。
今年は、元F1世界チャンピオンで、去年までフェラーリに在籍していたキミ・ライコネンが移籍してきたことで、大きな注目を集めています。
まとめ
business-sportにて解説された記事を元に、各F1チームのスポンサー事情について触れましたが、実際には複雑な条件をもとに金額などが決まっているだろうと想像されます。
また、単純にF1マシンにロゴを掲載して露出するという昔ながらのスポンサー目的だけでなく、F1を舞台に多方面でビジネスを展開することがスポンサーになる目的というお話しを聞いたこともあります。
そういった意味では、メルセデスAMGのスポンサーを務めるエプソンなんかはメルセデスとのビジネス上の取引の一環として、ロゴを掲載しているのかもしれません。
一度、F1のスポンサー関係の契約書を見てみたいものですね。